「ゼロポジション」―野球をやっている人なら、一度は聞いたことのある言葉ではないでしょうか。
簡単に言ってしまえば負担を軽減させるポジションのことですが、ゼロポジションの詳しい仕組みやメカニズムを説明できる人は多くありません。
仕組みまで知ることでゼロポジションを理解し、実践に使えるようになるので、肩への負担が多い投手の方は知っておいて損はありません。
というわけで、今回はゼロポジションの仕組みやそれに伴った腕の動かし方、正しい投球フォームについて解説していきます。
投球フォーム1つで大会に出られないことも
大会前になって野球肘などの怪我が発覚し登板できなくなったという話は時々あります。
選手本人が気を付けるのはもちろんなことですが、中には痛みを感じていながらもそれを隠して続ける選手もいます。
そのため、選手を見守る監督やコーチなどは特に注意深く見てやる必要があります。
無理をして怪我がひどくなった場合、最悪の場合は大会に出られないだけではなく、今後一生球を投げられなくなる可能性すらあります。
取り返しがつかないことになる前に、正しい投球フォームを身に付けて怪我を未然に防ぎましょう。
ゼロポジションとは?
まず初めに、ゼロポジションにおける骨格の位置を説明します。
人の肩甲骨には「肩甲棘(けんこうきょく)」という出っ張った部位があり、この肩甲棘と上腕骨(二の腕の骨)が一直線になったポジションがゼロポジションです。
腕をゆっくりと上げていったときに約140度開いた状態がゼロポジションにあたると言われています。
頭の後ろで手を組んで肘をまっすぐに伸ばした時の肢位がゼロポジションです。
野球におけるゼロポジションは、リリースポイントになります。のちほど解説しますが、自分のリリースポイントとズレていないか確認しておきましょう。
ゼロポジションを意識して投球する必要がある
ゼロポジションは肩における負担が最も少ない角度なので、投球数が多い投手はゼロポジションを意識した投球を心がける必要があります。
というのも、ゼロポジションを維持しているときの上腕骨には、外旋や内旋といった回旋ストレスがかかっていません。つまり筋肉や関節のバランスが安定した状態になります。
最も負荷が少なく安定した状態のゼロポジションを維持したまま投球することで、インナーマッスルを自然な形で動かすことができるのです。
コーチに投球フォームを見てもらったときに、「肘が下がってるぞ」と言われたことはありませんか?
ゼロポジションが崩れて肘が下がっていると、肩や肘に余計な負荷がかかり怪我に繋がりやすくなります。
そのため、思わぬ怪我を防ぐためにも、ゼロポジションを意識した投球フォームをする必要があります。
スキャプラプレーンとは?
ゼロポジションと重ねて覚えておきたいポジションが「スキャプラプレーン」です。
ゼロポジションほど知られてはいませんが、正しい投球フォームを作るうえで知っておいたほうがいいポジションです。
そもそも、スキャプラとは肩甲骨のことを指します。プレーンは面という意味なので、スキャプラプレーンとは肩甲骨面という言葉に置き換わります。
肩甲骨は板状の骨であり、丸みがある胸骨の表面に乗っているため、肩甲骨の面は身体の前額面に対して約30度~40度あります。この面のことをスキャプラプレーンと呼びます。
スキャプラプレーンを意識した投球フォーム
スキャプラプレーンは関節や人体のバランスが安定しているため、ゼロポジションと同じように回旋ストレスがほとんどなく、肩や肘にかかる負担も少ないポジションです。
投球を行う際もスキャプラプレーン上で腕を上げるのが好ましく、スキャプラプレーン上を外れて投球を行うと、スムーズな動作ができず余計な負担がかかります。
そこで無理をして運動を続けると、肩の前方に高い負荷がかかり、関節痛を起こしたり筋肉の炎症に繋がります。
注意点としては、投球フォームの中で胸を張って腕を後ろに大きく振り上げる際は、腕だけを後ろに引くのではなく、グローブを持っている方の肩甲骨とボールを持っているほうの肩甲骨の両方を引き寄せるように動かすと、スキャプラプレーン上の動作になります。
そうすることによって肩や肘にかかる負担を減らすことができるので試してみてください。
肘が下がってしまう投球フォーム
ゼロポジションやスキャプラプレーン上での動作を意識するのは大事なのですが、その前に今の投球フォームに肘が下がってしまうクセが付いている場合は、その癖を直す必要があります。
手だけでボールを投げようとしている
肘が下がっている投球フォームの特徴として、手だけでボールを投げようとしているケースがあります。
具体的には、肘から先の腕を使ってボールのコントロールを取ろうとしている状態です。
手だけでボールを投げようとすると、運動軸がスムーズに動かないため、肘に負荷がかかってしまいます。
投球フォームを見たときに、肘が肩よりも低い位置にあるときは要注意です。投げている自分では気づきにくいので、親やコーチ、友達などにチェックしてもらいましょう。
腕を鞭のように動かしていない
次に注意すべきポイントは、腕の動きです。
正しい腕の動きとして、鞭のようにしならせるという表現があります。
厳密に鞭のようにしならせる必要はありませんが、投球モーションの際は、肩→肘→手首の順番になるように腕を動かさなければなりません。
肘が下がってしまう人は、その動きができないという特徴があります。まず先に肘が出てしまうので、うまく遠心力が伝わらず球に勢いが乗りません。
次の項でも説明しますが、体全体をひねったスポンジのようにイメージすれば、腕の動きも理解しやすくなります。
身体全体をねじっていない
投球フォームが崩れてしまう人は、体全体で投げることを理解できていないパターンが多いです。
腕の筋肉が発達しているからといって、バッティングセンターにあるマシーンのようにアーム(腕)だけで投げても最大パワーは引き出せません。
分かりやすい例でいくと、スポンジです。投球フォームにおける身体全体をスポンジだと思ってください。ひねったスポンジが元の形に戻る動きのように、ボールを投げるときの胸や腕の動きも反動を利用しているのです。
身体や肩の回転運動に腕のしなりを合わせるように心がけましょう。
ゼロポジションの練習方法【真下投げ】
ゼロポジションを確認する練習法として有名なのは、真下投げです。大きなスペースは 必要としないので、試しに練習してみてください。
- 一本のラインをイメージする
- 前足の50cm先を目標にボールを真下に投げる
- ボールが真上に弾むように投げる
この時に注意点として、ボールを話す位置はできるだけ地面と近い位置にしてください。
真下投げの練習方法・動画解説【引用】
テキストでは分かりづらいと思うので、YouTubeに乗っていた真下投げの解説動画を引用しました。
まとめ
今回は、野球におけるゼロポジションの仕組みや投球フォームの注意点、練習方法などを解説しました。
スポーツに怪我は付き物ですが、未然に防げる怪我は防がなければなりません。
キャッチボールから始まり、試合中の送球からピッチャーの投球まで、「投げる」というのは野球において最も重要な動きの1つです。
正しいフォームができれば怪我をしないだけではなく球速もUPします。ゼロポジションを意識して野球をもっと楽しみましょう!